アサヒ・アートスクエアでAAPAという人たちの公演「Migrate」を見た。
会場に入ると、入口から見て右手、トイレのある側にひな壇上の客席がしつらえられている。床面をかなり広くパフォーマンスの場として取っているようだ。
バーカウンターの脇の写真展示を見つつ開演を待った。
6時半開演、まずAAPAの公演があって、その後で関係者のトークセッションを聞くという構成になっている。


AAPAという人たちを見るのも初めてなのだが、こちらの予習も足りなかったせいか、着席して今日の公演について書かれた簡単なプログラムを見るまで、AAPAと、この企画の主催者であるG-net TOKYOという人たちの関係がよく分かっていなかった。
終演後のトークセッションでは、広島でアサヒビールが所有している「アサヒの森」の責任者が座に加わる。
少々盛り込みすぎではないだろうかと思った。一見の客として見ていて、それらの当事者の関係がよく飲み込めなかった。
G-net TOKYOというのは、岐阜出身の東京生活者が設立したプロデュース集団ということだ。彼らの活動として岐阜の森林の問題を扱っていて、横浜を基盤とするダンス・パフォーマンス集団であるAAPAを岐阜に連れてきて、森林体験をさせつつ、現地でパフォーマンスをさせた。そこまでは、わかる。
東京での公演となったときに、そこにアサヒの森という要素を加えたことで、G-netの掲げる東京と岐阜の関係性というテーマが見えにくくなってしまったのではないか。岐阜の森林について語りたいのか、それとも森林一般について語りたいのか、よく分からない。協賛者であるアサヒビールに配慮しているのか?
AAPAのパフォーマンスについていうと、開演から程なく、客席正面のスクリーンの下の部屋(普段は倉庫か何かかな?)が、突然パフォーマンスの場として出現したのは驚いた。言ってみれば、メインの場に寄生するサブの場ということか。そこで展開していた、洗濯物を使った動きも、フェティッシュな感じで面白かった。
が、案外早々に、その寄生関係は解消され、あっさりとメインの場に統合されてしまう。物語的な意味はよく分からないけれど、もう少し、この二つの場が違った性質を持ったまま並立して、時折、その間を何かが行ったり来たりしていたらどうだろう、と勝手に考えたりするのだが。
彼らの動きそのものは抽象的なもので、そこから何か明瞭な意味を汲み取ることは難しかった。むろん、だから悪い、というわけではないのだが、もう少しぼくは、岐阜と東京という具体的な場を結ぶ線上に彼らのパフォーマンスを位置づけてみたかったのかも知れない。それが「距離」というキーワードで一般化されてしまうと、ぼくの期待からはやや外れることになる。
パフォーマーの中では、トークセッションにも参加していた永井美里さんという人の動きに惹かれた。彼女が体をひねったり、着地したり、手を伸ばしたり、それらすべての動きに体の末端まで意識が伝わっているように感じた。ひとつの動きがやわらかく吸収されて、なめらかに次の動きにつながると思った。
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森と人との距離をつなぐプロジェクト「Migrate」
会場: アサヒ・アートスクエア
スケジュール: 2008年11月15日 ~ 2008年11月16日
11月15日(土)open-13:30 start-14:00, open-18:00 start-18:30 16日(日)open-13:30 start-14:00
住所: 〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋1-23-1 アサヒスーパードライホール4F

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