横浜トリエンナーレは今日で会期が終わりなのだが、どうも足が向かない。
桜木町の駅で降りて、みなとみらいとは反対方向に歩き、にぎわい座の前を過ぎて、JRAを横目に、そのまま日ノ出町の駅前に至る。
黄金町バザールも今日が最終日で、どうしてか、どうしても、そちらのほうを覗いてみたくなった。


平戸桜木道路を歩くが、シャッター通り同然だ。腹ごしらえにラーメン屋に入る。横浜まで来て、なぜか博多ラーメン。この店の前にも、黄金町バザールの幟が立っている。とんこつラーメンは普段食べつけないが、これは悪くない。
大岡川が近くなると、ガイドマップを片手にうろうろしている人を時々見かけるようになる。見物人の勝手な感想だが、この程度の客入りがいい。
遅い秋の休日の、陽が沈みきってしまうまでの時間を惜しむような午後だ。
BankART桜荘の、のびアニキはハマトリに出張中。
パラソルショップで、しでかす、という着ぐるみユニットがサイン会をしているというが、子供がひとり来て遊んでいるだけ。
大岡川で発掘されたクラゲの化石を売っている(むろん手づくり)。地元の子なのかな、小学校低学年くらいの男の子が、作家の隣で手づくり化石の啖呵売をしている。作家に頼まれたのか、勝手に買って出ているのか知らないが、その口上が妙に上手い。ガキのくせに大人みたいな言葉遣いをしやがって、実にナマイキである。しかし、それがまた、この街に合っている気がする。
そういえば、幼い日の美空ひばりも、子供が大人の歌を歌う、ということで一部から反感を買っていたという話を思い出す。あれも横浜だ。
大岡川を渡って、向こう岸の川沿いを歩いたり、伊勢佐木町に入ったりする。
伊勢佐木町もこのあたりに来ると、ずいぶんのんびりしているものだと思う。古本屋を冷やかして、3冊200円の店頭本を買う。古本屋があるのは、いい街だ。こういう街なら住んでみたいと思う。
映画館の位置を確認しつつ、再び大岡川を渡って、黄金町に戻る。
この街はこれから、どうなるんだろう。
間口の狭い飲食店が軒を並べて、つい昨日の夜まで営業してました、とでも言わんばかりの生々しさのまま、そこかしこに残っている。
一部の店は、洒落たカフェや、作家のアトリエに姿を変えているようだけど。
その中の一軒に上がった。むろん、展示を見るためにだ。
これが江戸の遊郭であれば登楼というのだろうが、そんな粋なものではない。
急な階段を昇って、やたらと狭い部屋に上がり込む。
ある意味、実用的というのか。用を足せるだけの、必要十分な広さだ。
まさにこの場所で、夜毎行われていた営みに思いが至り、部屋じゅうに染みついた記憶の重さに、不意に気が滅入りそうになる。慌てて窓の外の大岡川を見下ろす。
ふと思う。この街に集まっていた風俗嬢たちは、いったいどこへ行ったんだろう?
そして、彼女たちを求めてさまよっていた、男たちの性欲は、いったいどこへ行ったんだろう?
* * *
黄金町バザール
会場: 黄金町バザールオフィス
スケジュール: 2008年09月11日 ~ 2008年11月30日
住所: 〒231-0066 横浜市中区日ノ出町2-165
電話: 045-261-5467

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