和装に革靴

そこそこ早く目が覚めたのに、二度寝してしまった。ようやく起き出して洗濯物を干して、だらだらしていたら、いい時間になってしまった。最初は、天気はいいし今日も歩いて行こうかなと思っていたのが、時間がないから、やっぱり電車で行こう、となり、そのうち電車も怪しい、バスにしよう、そのバスが渋滞で遅れて来ない、となって、結局タクシーに乗ってしまったのは、ここだけの話。

タクシーの後席に乗り込んで、ため息をついたら、運転手さんに同情された。わかりますよ、テレビを見てもいいニュースがないですからね、私は最近はケーブルテレビばかり、なんて、話好きの運転手さんには時々出くわすけれど、個人タクシーじゃなくて法人タクシーの運転手で話好きの人は珍しい気がする。

コロナ禍で満員電車を避けてタクシーで通勤する人もいるだろうから、景気はいいんじゃないですか、と聞いたら、去年の4月の緊急事態の時はそういうお客もいたが、近頃はそうでもないとか。コロナ慣れというやつだろうか。

タクシーを降りたら、袴姿の女性の姿がそこかしこに見える。そうか、卒業式の季節か。しかし、どこの学校だろう、このあたりに大学や専門学校はないし、と思って、彼女たちの顔を見ると、思いの外、幼さを残している。隣には母親らしい年長の女性を伴っている。もしかすると、高校生、あるいは中学生? 袴姿の女子といえば大学の卒業式という印象があったが、昨今は中高でも袴を着けるのだろうか。

ふと彼女たちの足許を見ると、草履を履いている人もいるが、革のブーツが多い。袴にブーツを合わせるスタイルが、ひとつの型になっているようだ。

和装に洋風のアイテムを合わせる装いの面白みは分かる。和服の自由な着こなしに取り組んでいる知り合いもいる。が、これだけクリシェになってしまうと、正直興ざめではある。

ところで、和装に革靴の組み合わせといえば、ホテルで就寝中に火事に遭って、浴衣に革靴姿で逃げ出してきた人だろう(そんなネタが昔の『気まぐれコンセプト』にあった気がする)。

朝はコンビニ。昼は適当に済まして、場所を移してコーヒー。

夕刻、バスで錦糸町に。所用。

カイリー・ミノーグというと、私が高校生の頃に洋楽番組でアイドル的な扱われ方をしていたのを覚えているが、ラジオで彼女の新曲を聞いて、まだ現役でやっているんだ、と懐かしく思った。しかも、まだ現役どころか、現役ばりばりであって、去年も新作アルバムがイギリスで1位を獲ったらしい。これで、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代、2020年代と、五つの年代に亘って全英No.1ヒットの記録を持つことになったというから、たまげてしまう。

さあ、日本にそんな歌手がいるだろうか? ひとり挙げれば、松田聖子という歌手は、80年代アイドルとして、稀に見るしぶとさを持った人だと思うが、今もオリコン1位を獲れるかというと、微妙ではないかと思う(松田聖子ファンの方には失礼)。

そんなわけで、もしカイリー・ミノーグが来日する機会があったら、ぜひ見に行ってみたいものだ。むろん、コロナ禍の収束後ということになるだろうが。

錦糸町からの夜道を歩いていると、横から自転車に乗った男がこちらを見ているので、気持ち悪いなと思ったら、お向かいさんだった。あれこれ雑談しながら帰宅。なぜかタバコの話。

帰宅してしばらくしてから、夜の散歩に。

墨堤の桜がいい具合に咲いている。人影は少ない。時々散歩やジョギングの人と出くわす程度である。これがコロナ以前の年なら、遅い時間まで酔客の影は途絶えなかっただろう。これからしばらくの間、夜桜が散歩者の目を楽しませてくれるのは嬉しい。

桜橋を渡って、一葉桜・小松橋通りに入った。街路樹の一葉桜は、まだ少し時期が早いようだが、すでに見事な花をつけている木もある。開花の進み具合が木によってずいぶん違うと思った。

いつもの銭湯の前で若者がたむろしている。路上でスケートボードに興じている者もいる。この場所で若者の姿を見るのは珍しい。彼らを避けるように銭湯の暖簾をくぐったら、後からその若者たちもぞろぞろ中に入ってきた。皆一様に番台で大小のタオルを借りて、サウナに入るらしい。大勢の若者と居合わせることになるとは、タイミングが良くなかった。

スケートボードで遊ぶような、今ふうの若者がつるんで銭湯サウナに来るというのも、昨今のサウナブームの表れなのだろうか。

湯上りに脱衣場で足の指に水虫の薬を塗っているおじさんがいる。正直見たくない光景である。そういう人は銭湯に来るのを控えてほしい。さもなければ、薬は家に帰ってから塗ってほしい。

浅草警察署のはす向かいの浅間神社の桜も美しい。

14,329歩。朝タクシーに乗った分の出遅れを、錦糸町からの帰りと夜の散歩で挽回した。