バリ封

NISSAN PAVILIONから歩いて新高島駅へ。駅構内にあるBankART Stationには初めて来た。

川俣正さんがこれまで手掛けたプロジェクトの記録が展示されている。おそらくこれらのプロジェクトの背景には現代の社会や都市に対する深淵な考察があるのだろうが、私などは単純に「秘密基地」みたいだなあと思いながら見ていた。

ご多分に漏れず、私も小学生の頃、校庭にある大きな木の根っこの窪みに板切れ等を持ち込んで拡張して、秘密基地を作って悦に入っていた。あと、これは雪国に限るけど、かまくらというのも一種の秘密基地ではないかと思う。なんだろう、自分の家の他に居場所が欲しかったんだろうか。

同時に、都市の中に材木が積みあがった写真を見ながら、先の大震災から程無く、小名浜や気仙沼を訪れて目にした、瓦礫の山を思い出さないでもなかった。今回の一連の展示は『都市への挿入』と題されているけれど、人為でなく自然の圧倒的な力で挿入される場合もある。

新高島駅からみなとみらい線で、馬車道駅へ。

馬車道駅の構内に積み上げられた工事用の足場。

駅の構内には、川俣展とは別の企画で、動物をモチーフにした作品が点在していた。

これは開発好明さんの作品。

ピアノの音にひかれて近づくと、ストリートピアノをやっていた。

構内には傘が点在している一角もあった。最初、この傘も作品なのかなと思ってしまったが、そんなわけはなく、傘の陰にはホームレスの人が居着いているのだった。まあでも、いっそこれも作品ということにしてはどうか。クリストの傘というのもあったでしょう。

駅の外に出た。

こうして後から写真を見ると、古い銀行の建物がバリケードで封鎖されたようでもある。かつての学生運動で東大や京大の校舎が封鎖された様子を想起しないでもない。むろんここには学生も機動隊の姿もない。このバリ封は何から何を守ろうとしているのだろう。

半年ぶり

横浜へ。京成曳舟から乗り換えなしで行ける電車に乗った。東京と神奈川の県境を越えるのも半年ぶり。

縮こまった身体を徐々に伸ばしていくように、コロナ禍で一気に狭くなった行動範囲を、自分の家の周りから始まって、一歩一歩確めるように、時間をかけて、慎重に拡げている。ある意味では、今ほど交通機関のなかった頃の人の視点を追体験しているようでもある。その過程で、今まで見落としていた風景がずいぶん目に入るようになった。

とはいえ、電車に乗ってしまえば程なく横浜である。この時間感覚は、おそらく戦前あたりに電車が走るようになってから、そう変わらないのだろうと思う。

能書きはさて措き、まずは腹ごしらえ。せっかくなので横浜らしいものということで、サンマーメン。地下街の小さな中華料理屋で。

そごうとスカイビルの間を抜けて、みなとみらい地区に至る人道橋(はまみらいウォークというらしい)を渡った。橋の上からスカイビルを見上げて、あのあたりがスカイスパかなと思う。

橋を渡ると日産グローバル本社ビル。ギャラリーを見下ろしながらビルの中を通り抜ける格好になる。

ギャラリーと言っても日産車のギャラリーだが、美術作品もある。日産アートアワードの過去の受賞作が展示されている。

毛利悠子さんはこんなデュシャンピアンだったのかと思う。レディメイドの車輪が組み込まれた作品は、大ガラスのようであり、モレモレの落ちる水は「遺作」を思わせるようでもある。

田村友一郎さんという人の作品は、この場所に置かれると自動車のエンジンがむき出しになっているようである。

さらにグローバル本社から少し歩いで、NISSAN PAVILIONに向かう。

フェアレディZプロトタイプは今日までの展示。

ちなみにこのエントリーのトップの写真は、リツイートして貰ったオリジナルマシュマロ。

ホールで映像を見たりしているうちに、結構時間を過ごしてしまった。