パラレルワールド

昼過ぎ、雨の合間に外出。鳩の街通りを駅に向かっているうちに雨粒がまた大きくなってきた。まず四谷三丁目に向かう。

TS4312で、田中偉一郎氏の展示「芸術の果て ノンパワースポット」を見る。今回の展示にあたり、田中氏はその場所がパワースポットならぬ「ノンパワースポット」であることを示す小さな銘板を全国あちこちに設置してきたのだとか(もちろんその設置はコロナ以前の2919年に行われた)。会場ではその銘板と、現地で拾ってきた石(ノンパワーストーン)等が展示されている。

窓から新国立競技場が見える

設置場所のリストを見ると、なるほどノンパワーなのだろうなという場所、パワースポットと言ってもよさそうな場所、むしろネガティブパワースポットではないかという場所など、様々である。またその様々さを、等しくノンパワーに還元してしまうところに、この小さな銘板の意図があるのだろう(ミニマムでミニマル)。

また、この企画は最終的に作家と鑑賞者が銘板が設置されている現地に出掛けることまで想定しているらしい。ギャラリーオーナーの沢登氏に「鑑賞旅行ですね」と言ったら、センチメンタル・ジャーニーの感傷旅行と重なったようで笑われてしまった。

新宿駅のベルクで休憩。ここに来るのもコロナ以後初か。立ち席がアクリル板で仕切られている。そして4月から全席禁煙になったとのことで、店内ではベルク副店長でもある迫川尚子さんによる喫煙する人々をモデルにした写真が展示されていた。

JR新宿駅自体が久し振りで、改札の内側の風景がずいぶん変わっていて戸惑う。

所用で高田馬場に。駅周辺の風景はなかなかしぶといと思っていたが、かつてレコード店のムトウやレンタルショップの45°の入っていたビルが取り壊されてしまった。地下鉄入口の奥にあった本屋にもよく行ったものだが。ということは喫茶店の白ゆりももうないのか。

新井薬師前のギャラリー、スタジオ35分で駒井哲郎の版画展を開催しているというので、出掛けようと思う。この場所は初めてだが、雨も上がったし、暑くもないので、思い切って高田馬場から新井薬師前まで歩いて行ってみることにする。

さかえ通りは歯抜けのように更地が増えている。見慣れない店も増えた。昔何度か行った新宿区立中央図書館は移転したのか。下落合図書館となって小洒落た建物に建て替わっている。

妙正寺川沿いを歩き、途中から中井通りに入った。

中井駅近くで銭湯を見つけたので、少し汗になってきたし、入っていくことにした。貸しタオルをお願いしたら、番台のおばちゃんが「レンタルですか?」と英語で聞き直すのが、にわかに理解できず何度も聞き返してしまったが、よいお湯とたっぷりとして程よく冷えたかけ流しの水風呂に満足。湯上がりは愛想のいいおばちゃんだった。

西武新宿線沿いのこのあたりは、昔から何かしら縁のある場所だし、短期間だが住んだ時期もある。が、この距離を歩くのはさすがに初めて。もしあの頃別の選択をしていたら、このあたりの街ともっと深く関わることもあったのだろうか、と思いながら歩いていると、自分が今、パラレルワールドの中にいるような気分になってくる。

というわけで、寄り道したせいですっかり日も落ちたが、無事スタジオ35分に到着。今回の展示は1970年代の版画家の晩年の作品が多いようだ。併設のバーでビールを飲んだら、うっかり溢してしまって恥ずかしい。その一杯だけで失礼した。

帰りは新井薬師前から中野まで歩いた。ブロードウェイと平行している飲食店街を歩いたら、コロナ騒ぎなど別世界のような人の多さと賑わいぶりに気圧されてしまった。16,671歩。