半蔵門駅上のサンマルクカフェで遅朝、いや昼飯かな、を済ませて、国立演芸場へ。11月上席「三遊亭金時改メ五代目三遊亭金馬襲名披露公演」の初日に。
9月下席の鈴本演芸場から始まった五代目金馬、そして四代目金馬改メ金翁の披露目も、定席での興行は当席まで。ずっと見逃してしまっていて、ようやく来られた。
緞帳が上がると、後幕は金地に大きく「五」の威勢のいい筆文字。
開口一番 三遊亭歌つを「やかん」
この人は初めて見るが、調べると歌奴さんのお弟子さんで、高知出身とか。わかりやすい名付けですね。活舌のよい声がはきはきと出ていて好ましい。若々しく、それでいて若すぎない、つまり若手落語家に好適な雰囲気。
春風亭一花「花色木綿」
一花さんは、一朝一門の師弟が喋っているインターネット番組でちらりと姿を見た程度で、落語を聞くのは初めてだと思う。泥棒が出てくる噺は縁起がいいということで、浅草寺の賽銭泥棒の「におうか?」の小噺からの「花色木綿」。
三遊亭金朝「初天神」
金朝さんは金翁さんの孫弟子にあたるのだとか。先年亡くなった三遊亭小金馬さん(正直記憶になかったけれど)のお弟子さんになるらしい。入門した頃が新金馬、当時の金時さんの真打昇進の時期だったそう。「小児は白き糸のごとし…」から「初天神」に。台詞の語尾を伸ばしたり、繰り返したりするのが効いて、まるで歌うように、流れるような「初天神」。
マギー隆司
紅白のハンカチや大きなトランプを使ったマジック。
柳家小さん「親子酒」
小朝さんの代演。
柳亭市馬「時そば」
さすがの安定感だが、二番目に出てくる男があまり間抜けな感じがしない。上方の「時うどん」だと、粗忽を超えてエキセントリックだったりするが、この「時そば」では、一文だまし取った最初の男も、それを真似しようとして失敗する二番目の男も、キャラクターの造形はさして違わず、もっぱらシチュエーションの違いが齟齬を生むようになっている。ミニマルということもできるか。
口上
下手から、金朝(司会)、小さん、金馬、金翁、市馬の順。金朝師が、金翁は今91歳だが100歳まで喋りたいと言っている、新金馬も100歳になるまで、ここにいるお客様は一人も欠けることなく応援してほしい、というようなことを言ったら、次の小さん師が金朝の言うことはよく分からないと突っ込むが、正直小さん師の言っていることのほうがよく分からなかった。この人らしい苦味のある挨拶だったが、祝いの場にはどうなのか。
通例、口上では当人は喋らないということだが、金翁師が挨拶。やや色が白くなってふっくらとされたように見えたが、口跡はしっかりしていて安心。
市馬師の音頭で三本締め。三本目は世界平和のために。
三遊亭金翁「ねぎまの殿様」
釈台を置いて喋る。まくらで、二年前に脳梗塞で倒れた後のリハビリテーションの体験を漫談風に。手足を動かすのに不自由な時期もあったようだが、笑いをまぶしつつ、結構色気のあるところも見せて、若々しいし、何よりセンスが現代的だと思う。枯淡という境地にはならない。こういう年の取り方もあるんだなと思う。
「ねぎまの殿様」は、殿様がお忍びで町に出て、庶民の食べ物の味が忘れられず…という「目黒のさんま」みたいな噺。本郷のお屋敷から向島に雪見に出かける途中、上野広小路に出ていた屋台の匂いにつられて、ねぎま鍋で一杯。結局向島には行かずじまい。
ところで、金翁さんの高座を見たのは、2018年6月30日に、当時の金馬さんと川柳川柳さんの二人会を聞きに行った時以来だと思う。倒れられたのはその年の7月というから、二人会からひと月も経たない時期だったのか。川柳さんはお元気なんだろうか。
柳家小菊
「並木駒形」やどどいつはお馴染みだが、「せつほんかいな」という端唄は初めて聞いたように思った。ぞろりやぞろりやぞんぞろり、目出度いな目出度いな。
三遊亭金馬「柳田格之進」
金時改メ金馬さんは、若い時から名前も顔も売れた人だし、寄席の高座でも見たことはあるはずだが、どんな落語をされていたか、これといった記憶がない。ご本人のニンは、いかにも二代目らしい、屈託のない、明るいキャラクターだ。だから、「柳田格之進」が始まって、この演目をかけるのかと驚いた。重たい噺である。「誇り高い武士の生きざまを描いた…」などというと聞こえはいいが、私はこの噺を聞くと、やるせなくて、胸がもやもやする。そんな本寸法の人情噺を、30分余りかけて、しっかりと聞かせた。正直、噺の出だしは、やや軽いように感じた。でも、物語が進むにつれて、締まってきたように思う。
国立演芸場を出て、永田町駅から有楽町線に乗って、東池袋へ。
サンシャインシティで園芸の屋台が出ていた。生花はすぐに枯らしてしまうけど、ドライフラワーならいいだろうと思って、自宅用に少し買った。
タイムズ スパ・レスタへ。ちょうど今日からフィンランドフェアが始まったらしい。
タイ健式マッサージを90分。前回と同じセラピストを頼んだが、こんなによく笑う人だったかな。それとも私が可笑しいということ?
マットの上に座った姿勢になっている時、少し前に出るように言われて、上半身を前傾しようとしたら、腰から動かすようにという趣旨だったのだろう、「ケツを」と言われたのが可笑しかった。若い女性が、それも客に向かって「ケツ」とは、あまり言わないだろうが、不意に出るざっかけない言葉遣いは嫌いじゃない。
前回より強めに施術してもらって放心。施術後はルイボスティーとフィンランドのクッキーで休憩。
11時前に出て、帰宅したら日付が変わっていた。6,581歩。