熊手

リンゴと柿を朝飯代わりに。急いで柿を食べないとどんどん柔らかくなってしまう。

外出。ヒガムコでコーヒーとサンドイッチの早昼。コーヒーは、以前はプラージュブレンドにしていたが、最近はもっぱらメールブレンド。サンドイッチの具は地蔵坂のOTISのハム。

半蔵門へ。国立演芸場の11月上席、五代目金馬襲名披露興行に。

当席は11月1日の初日に続いて二度目の訪問。もともと今日行くつもりで予約していたのを忘れて、後から初日も予約してしまったのだった。いかにも迂闊だが、結果的にはそれでよかった。初日に出演していた金翁師が今日は出演がなかった。高齢の金翁師の出演はその日の体調次第だから、初日に姿を拝めたのは幸いだった。

開口一番 柳亭市松「小町」
前座噺のようだが私の耳には新しかった。この噺は、「道灌」の前段として口演されることがあるらしい。小野小町と深草少将の「百夜通い」の物語(小町は少将に百夜通えば恋を叶えると約束したが少将は九十九夜目の雪の夜に行き倒れた)が、尾籠な落ちになる。

柳亭市若「牛ほめ」
声が大きい。ということは前座さんが大人しかった?

三遊亭金也「たいこ腹」
金馬一門の噺家さんは、正直いって、新しい金馬、もとの金時さんくらいしか馴染みがなかった。金也さんは先代金馬、現金翁さんのお弟子さん。童顔のせいか、お坊ちゃんのような雰囲気の人だが、ご当人のブログを見ると、どうして弾けたところもありそうだ。この「たいこ腹」という演目は、若旦那がいくら退屈で仕方がなくても、急に鍼を打とうと思い立つのは唐突だと思わないでもなかった。金也さんの演じ方では、若旦那は、父親が横町の鍼医に行ったのを見て、鍼を打とうと思ったことになっている。なるほど。

マギー隆司
当席初日と同じネタ。すなわち、紅白のハンカチ、カード、三色のロープ。

春風亭小朝「新・袈裟御前」
夫のある袈裟御前に恋慕した遠藤盛遠、後に出家して文覚が、御前とその夫を取り違えて殺してしまうという物語に、小朝師の大河ドラマへの出演や、芸能界のゴシップ、世間の夫婦の浮気率等、下世話な小ネタを絡めていく。傷のあるなめくじを御前の生まれ変わりと飼っていた御前の母親だが、いつの間にか、なめくじが消えてしまった。娘だけに手塩にかけすぎたから、というサゲ。噺の導入で師が奇祭として紹介していた「なめくじ祭」は実在するらしい。
しかし、小朝さんが現代の客に降りていく時の言葉のセンスはどうなのだろう。正直、80年代的というか、今の空気からズレているように思えてならない。

柳亭市馬「がまの油」
市馬師のがまの油の啖呵売の口上が聞きもの。胸がすく。

口上
舞台下手から金也(司会)、小朝、五代目金馬、小さん、市馬の順。小朝師は、自身の師匠である先代柳朝師が倒れた後、金翁師が毎年見舞いを送っていたというエピソードを紹介。今回の金馬の襲名は、ただ金翁師の倅だからではなく、かくも律儀で芸にも真摯な金翁師が認めたのだから間違いないと、近年の木久蔵、三平の襲名を当てこすりつつ挨拶。この小朝師の口上を、やはり実父の名跡を襲った小さん師はどう聞いたか。ある意味、小朝師が小さん師に宛てたネタ振りと言うこともできるのに、小さん師は特に反応せず。

柳家小さん「豆屋」
この噺も私の耳には新しかった。貧乏長屋に入りこんだ豆売りが、「らくだ」に出てくるような粗暴な住人に翻弄される噺。

すず風にゃん子・金魚
柳家小菊さんの代演。おなじみトレーニングバスツアーでのアニマルエクササイズのネタ。金魚さんの頭には酉の市の熊手。

三遊亭金馬「ねずみ穴」
しっかり聞かせた。初日に聞いた「柳田格之進」もよかったが、武士と町人とが交わったために翻弄される人々の悲劇であり、やや肩が凝る。今日のネタは町人の物語だが、兄弟の生きざまの違いが根底にある。兄が弟に商売の元手として貸した額が三文だとか、弟は所帯を構えて幼い娘がいるのに対して、兄は食い扶持がかかるだけだと妻子を持たないというのは、物語上の実話なのだろう。結果的には弟の身代は無事で何よりなのだが、この生きざまの違いは残る。

一旦帰宅して、日が落ちきる前に散歩に。

金美館通りに入って程なく左に折れて、歩いていると、合羽橋通りに出た。日が暮れて、ほとんどの店はすでに店を閉めている。西浅草から六区に。

千束通りまで戻って、喫茶店で休憩。初めて入る店。店先に浅草界隈の食べ歩き地図が置いてあった。この辺りの通人が作ったものなのだろう。この店はオムマキ(卵で焼きそばを巻いたものとか)が旨いらしい。今日のところはコーヒーだけでお許し願う。

脱衣麻雀ゲームが置いてあった。動くんだろうか。

いつもの銭湯へ。変わり湯はゆず湯。

帰り道で雨に降られた。濡れながら歩ける程度の小雨だったけど、寄り道せず帰宅。夜は家にあるもので済ます。18,017歩。