変容

午前中は怠惰に過ごす。ラジオで桂南天さんの「一文笛」など聞きつつ、インスタントラーメンを作って食べるなど。

行きつけの楽天地スパもタイムズ スパ・レスタも、今日からしばらく休み。寄席はやっているらしいが、今日はいいや、という気分。いつもの銭湯が3時に開くから行こうと思うが、それまで特段予定もない。

昼過ぎに出た。アジサイが花の季節の準備を始めている。

隅田川沿いの首都高の高架下をぶらぶらと歩いて、言問橋で台東区側に渡った。

「戦災により亡くなられた方々の碑」とある。隅田公園のこのあたりは、東京大空襲等で失くなった人々の遺体を仮埋葬した場所であったらしい。

「アリの街」というのは聞いたことがある。何年か前に、かつて江戸・東京にあった芸人街に興味を持った。芸人街は貧民街と重なる。その頃に読んだ本の中に、アリの街について触れたくだりがあった。当時は特に注意を払うこともなかったが、そうか、ここにあったのか。

「この地に戦災で家や家族を失った人々が廃品回収を生業に働き共同生活する場が誕生しました」とある。

廃品回収を生業にしている人なら、「アリのように勤勉に働」いているかどうかはわからないが、今でも橋のたもとに住み着いているようだ。

待乳山聖天に寄ったら、参詣客の姿がちらほら見える。人力車夫に案内されてここまで来ているようだ。観光ルートに入っているんだなと思う。人出が緊急事態宣言に影響されているかどうかは知らない。

馴染みの店に来た。今日からしばらくはランチ営業に限って、アルコールも出ない。しょうが焼きがランチメニューにあるのは珍しい。ご飯はもう少し柔らかいほうが有難い。

コーヒーでしばらく過ごして、いい時間になった。昨夜の分のお代も合わせてお勘定してもらいながら、これから銭湯に行くと言ったら、電気風呂に入るよう勧められた。

電気風呂はあちこちの銭湯にあるが、私はまず入らない。どちらかというと苦手である。まあでも、勧められたことでもあるし、意を決して、入ってみた。

最初、壁に掛かった注意書きを読みながら、壁に向かう姿勢で、左右の電極の間に恐る恐る身体を沈めた。案外、刺激を感じない。こんなものかと思って、壁を背に向き直ったら、ずん、と重い刺激が腰に来た。結構来ますね。

まずは程々にして、電気風呂の隣の変わり湯(今日はラベンダー湯)に移った。言うまでもなく、こちらの浴槽には電気刺激はない。これまで何度となく変わり湯に入っているが、電気刺激がないという、いわば不在の感覚を覚えたのは初めての体験だった。電気風呂に入ることで、電気風呂でない風呂の入浴体験まで変容するのだと感じ入った。

銭湯から出たら、まだ外が明るい。日が長くなったこともあるだろう。今日はあまり長く歩くつもりはなかったけれど、歩いているうちに足がどんどん前に進む気がしてくる。

ヒルガオの花が咲くのを今年初めて見たと思った。14,180歩。