はしご湯

目が覚めて枕元のスマホで時間を見たら、まだ5時をいくらか回ったあたり。寝床で今日はどうしようかと考えて、思い立って5時半過ぎには家を出た。すでに夜は明けているが、雲が張っていて青空は見えない。予報ではこの後暑くなるらしいが、まだ涼しいくらいである。

桜橋を渡って、いつもの散歩道を歩いた。途中、入谷で早朝ランニングの子供たちとすれ違い、鶯谷では、これからご出勤らしい女性がお迎えの黒いバンに乗り込むのを見た。

根岸で歩道橋に上がると、建物が取り壊されているのが見える。有名な豆腐料理店のあった場所だと思う。この店にはまだ縁はなかったので残念に思ったが、調べると近隣地で営業を再開する予定というので安心した。

6時半過ぎに萩の湯に着いた。朝風呂営業の時間にここに来るのは初めてである。

あつ湯のカーネーション風呂に入って、今日が母の日だということを思い出した。水風呂で身体を冷やしてから炭酸泉に入ると、お湯の温度より体感温度が低いように感じる。炭酸の泡が身体から熱を奪うのだろうか。この感覚はなかなかいい。

最近は銭湯に電気風呂があると試してみることにしている。ここの電気風呂はパルスのパターンが規則的に変化する。これも初めての体感だった。

風呂に入ったり出たりしているうちに、二時間近く過ごしてしまった。早出して来た甲斐もあるというものだ。

萩の湯を出て、尾竹橋通りを三河島に。もうすっかり晴れた。濡れたタオルを乾かすつもりで手に持って歩いた。

三河島というのは、三河出身の農民がこの地に住み着いたところから来ているらしい。

駅を越えたところでショートカットして明治通りに入った。三ノ輪方向へ。

荒川区役所は公園の中に庁舎があるという趣で、あちこちで薔薇が花盛りである。区役所の建物のバルコニーにまで花が咲いているのが見える。こういう区役所はいいと思う。

歩いていたら都電に出くわした。上京して幾星霜、さあ、これまで都電荒川線に乗ったことはあっただろうか?

都電に乗るのは今度にして、今日は歩く。

線路沿いの道が小学校の前で途絶えて、さあどうしようかと思ったら、そこにジョイフル三ノ輪の看板が見えた。

珈琲館のモーニングで休憩。カウンターの中の店員が常連らしい客に親しげに言葉をかけている。この店は都電三ノ輪橋駅のホームと直結している。店内には都電グッズも置いてあって、ただのチェーン店というわけでもなさそうだ。

アイスコーヒーで人心地ついて、駅周辺をひとまわりした。

荒川区役所のほうから歩いて三ノ輪に来たのは初めてである。先日は山谷掘から土手通りを歩いて三ノ輪の交差点近くまで来たが、ここで道がつながるのかと思う。大げさに言うと、山の両端からトンネルを掘って、真ん中で穴が貫通した時のような感じがする。

投げ込み寺の別名もある浄閑寺には、永井荷風の詩碑があるらしいが、よくわからなかった。墓域にあったのかも知れないが、墓参の人もいる中で、ずかずかと歩き回るのは憚られた。

商店街の中にある銭湯に入った。ここは朝10時から営業しているという。

商店街に面した入口から入ると、薄暗い番台がある。下駄箱の鍵を預けると、脱衣場のロッカーの鍵を渡される流儀である。

脱衣場に入ると、思いの外広く、天井も高い。流し場も同様。しかし、いかんせん古い。お客も一緒に年を取ったような老人が多い。

奥に草津温泉と和倉温泉の名前がついた浴槽があった。草津のほうのお湯は白濁している。和倉温泉のお湯は塩分が濃いらしいが、さすがに実検は遠慮した。

草津温泉に入っていたら、後から入ってきた老人が何か延々と話しているが、こちらに話しかけているのか、独り言なのか、分かりかねて困った。

商店街は日曜の午前中から結構人が出ていた。当たり前だが、日曜営業している店が多いということでもある。

湯上がり、日光街道を千住大橋まで。

隅田川テラスに出て、千住汐入大橋を渡り、汐入公園に。

白鬚橋を渡って、墨堤通りに入り、地蔵坂を通って家に帰った。飯を食って午睡。

夕方、涼しくなったところで出直した。

桜橋を渡って、今度は浅草辺に。

ひさご通りから千束通り、デンキヤホールで休憩。アイスコーヒーと、ご飯が切れたというので、焼きそば。

今日は喫煙者の相客もなく、長居させてもらった。

いつもの銭湯に。ほうじ茶風呂に入っていると、なんだか自分がお茶っ葉になって煮出されているような気がしてくる。

今日は銭湯を三軒はしご湯した。温泉場で湯めぐりしたことはあるけれど、東京で銭湯に一日三軒入ったのは、さすがに初めてである。36,580歩。