残影

まずまず起きられたが、6時をだいぶ回っているから、夜はすっかり明けている。朝方は曇り。

桜橋を渡って、いつもの散歩道を千束、入谷、根岸と歩く。

日曜朝の萩の湯はこれで四週連続になる。

先週来た時に気がついた、洗い場に掛けられていた見慣れない絵は、都内の銭湯で開催中のアート・プロジェクトの展示作品だったようだ。むろん、東京オリンピック応援(便乗?)企画である。店内のチラシに書いてあった。

しかし、チラシの日付は一年前になっている。してみると、もともと去年予定していた企画を、会期をまる一年ずらして開催したということか。去年のチラシをそのまま使うのもどうかと思うが、作り直しもお金がかかるだろうから、やむを得ないのだろう。

この銭湯アート・プロジェクトでは、作品の分野ごとに、いくつかの銭湯が展示会場として使用されていて、ここ萩の湯はアール・ブリュットの作品ということになっているようだ。

そういう能書きを読んでから、改めて洗い場の絵を見ると、能書きを意識してしまって楽しめない。先週、ただ風呂に浸かりながら、ぼんやり絵を見ていた時のほうがよかった。もっとも、多くのお客はそんな感じだろう。

水風呂を出て風に当たろうと、露天の場所に行ったら、20代半ばというところか、若者の四人連れがお喋りの最中である。近所迷惑になるから、この場所では特に会話を控えるように、という貼り紙も彼らの目には入らないらしい。こういう若者客は、えてして貸しタオルで入浴しているので、この頃私は銭湯で貸しタオルの客を見ると、警戒するようになってしまった。

彼らの会話を聞くでもなく聞くと、20いくつで誰が童貞だとか、エロゲーがどうとか、実に下品である。が、生々しいとも言える。artかどうかは分からないが、brutである。

銭湯を出て、ゆで卵がぎっしり入ったサンドイッチを出すカフェに。こちらは三週連続。もう、すっかり日曜朝の習慣である。

今朝の落語は笑福亭生喬さんの「百年目」。大ネタに朝から聞き入った。生喬さんって、こないだ米朝チャンネルの「人生はポトフ」で、桂あさ吉さんとハンバーグ対決してた人か! 東京であまり聞く機会のない、達者な噺家さんが上方にはたくさんいるなあ、と思う。

尾久橋通りを日暮里方向に少し歩いてから、日暮里南公園、そして御行の松通りに。

この通り沿いに御行の松不動尊がある。境内に植わっている御行の松の木は、今は四代目というが、初代の御行の松は、江戸名所図会等に描かれた名松だったという。が、残念ながら昭和初期に枯死してしまったとか。ちなみに、御行の松は根岸小学校の校歌の中に歌われているらしい。機会があったら地元の人に聞いてみよう。

江戸時代の根岸は風光明媚な場所として知られたらしいが、今、鶯谷駅の周辺を見ても、当時の面影を辿ることは困難である。が、駅から少し離れて歩くと、かつての残影をいくらか感じられるように思う。

根岸柳通りに入って、金杉通りを越えると、昭和通りに出た。なるほど、こう道が繋がっているのか。萩の湯からの帰りの散歩道をひとつ開拓した。

一旦帰宅。帰り道で買ったクロワッサンをひとつ食べて昼寝。結構な雨が通りすぎた。

雨が上がったので外出。再び桜橋を渡って、裏浅草に。

いつもの店で、ランチというには遅い、軽い食事。昨日と同じ夏野菜のスパゲッティーだが、開化楼の麺が切れたというので、普通の乾麺にしてもらった。茹で具合が適当で、これはこれで旨い。

腹ごなしに、カフェなどを探索しつつ、浅草辺を歩いているうちに、また雨が降り出した。雨粒が大きくなったところで、いつもの銭湯の前に来た。図ったように入浴。

銭湯を出ると、小降りではあるが、傘なしで歩けない程でもない。帰り道の途中で雨は上がった。

24,711歩。